劇場版 空の境界 第一章『俯瞰風景』

デスノート祭り(というかローライト祭り)以降、祭りに飢えていたこともあり、この劇場版は非常に楽しみにしてました。三年前に作品を読んでからジワリジワリと僕の中の奈須きのこ株は上がり続け、ネットで聞き及ぶ本作の評価も軒並みに高いこともあって、今年に入ってからは期待値はうなぎ登りに激増し、なんかもう独りで盛り上がりすぎて、主題歌の『oblivious』を聞きながら脳内で勝手に「俺版空の境界」を再生してしまう程になり、これ以上焦らされたら金玉が爆発してしまう! というところまで(頭が)湯だったところでDVD発売、遂に先日観賞した──というのが、僕の「空の境界体験」のあらましです。どうでもいいですか、そうですか。それだけ過剰に期待した状態で観た、ということを説明したかったんですよ。こういう「ずっと楽しみにしていた大作RPG発売までの高揚感」的な感覚って久しく味わってなかった素敵体験だったので…。こちとら、こういう快楽を味わうためにオタクやってるんだ。

で、現時点でとりあえず5回ほど観賞したんですが、その上での全体的な感想は「うんうん、原作を丁寧に読み込んで、きっちりかっちり、愛情たっぷりに創っていて好印象。……けどまぁ、俺が期待してたようなエポック的な前人未到の(アニメ)映像体験ってほどではなかったかな。鳥肌が立つ、というレベルにまでは至らなかったっつーのが正直なところ。まだもう少し創りこむ余地はある気がするね。いやいや、でも十分に納得の出来るクオリティーなのは間違いない。よくがんばったと思いますよ?」といった感じです。

…え? それだけ盛り上がってたわりには微妙に淡白な感想じゃないかって? ああ、そうだよ! 俺が阿呆みたいに期待しすぎたんだよ! あまりにも究極の味を期待しすぎて、十分に一流の出来の料理が出されても「うんうん、美味いっすよ。美味い。かなり美味い。でも…」みたいな微妙な感想を抱いてしまう、みたいなことになっちゃったんだよ! みんなも過剰な期待のし過ぎでこんなことにならないように気をつけてね!(おまえがアレなだけだろう)

えーと、そんなこんなで初見のインパクト自体は、個人的にそれほどでもなかったものの、観れば観るほど味わいの出る作品であることも確かなので、以下に細かい部分の感想を箇条書き。

  • 全体的に叙情的というか、伝奇色よりかは幻想的な雰囲気が全編にわたって横溢していたと思う。……正解じゃないか!
  • オープニングの「蜻蛉と蝶」の映像はまさに幻想的という表現が似合うものになっており、空の境界を象徴する導入となっていたと思う。……正解じゃないか!
  • コクトー視点をばっさりカットして、あくまで「両義式」を主体とした構成になっており、原作よりも式に対する感情移入が出来るようになっていたと思う。……正解じゃないか!
  • 風景のカットを所々に差し挟むことで、現実と幻想の境界性、みたいなものを象徴的に浮き立たせていたと思う。……正解じゃないか!
  • 声優に関しては、坂本真綾(ピッタリ)、本田貴子(バッチリ)、鈴村健一コクトーの年齢設定に合わせて微妙に大人びた落ち着いた感じの声になっているとは…恐ろしい子!)、田中理恵(僕の中の巫条イメージよりかはちょっと甘ったるい感じだったかな。悪くはなかったけれど)。……概ね正解じゃないか!
  • 映像・作画面では…背景のリアルさとキャラクターのアニメっぽさが微妙に齟齬を起こしている気がしなくもない。平面的なキャラが立体の空間にいる違和感──要するにイノセンスのアレ。まぁ、キャラクターデザインについては完全に好みによるので、別に問題ではないと言えばないんですが。
  • ストーリーは…やっぱり原作を読んでおかないと、もしくは何回か観直さないといまいち分かりにくいことは必至じゃないかなと。まぁ「なんかイチャイチャしてる若いカップルがいて、優男のほうがなんか変な貞子っぽい幽霊ねーちゃんに拐かされて、着物ねーちゃんのほうが激怒、ありえない運動神経で幽霊をぶっ刺して退治。あとなんか大人っぽいねーちゃんがそれっぽい説明をしたりしていた。ハーゲンダッツが美味そうだった。あとやっぱりイチャイチャしていた」くらいのことが分かれば十分だと思うので、問題はないか(問題はないのです)。
  • 前半の月夜の中の巫条ビルは、完全に異界のそれで、不気味な音楽とも相まって「この場所はどう考えてもヤバイ」感が漂っていて大変に良かった(鴉が飛んでいるシーンとかもう…!)。ああいう既存の風景を元手にあれこれ手を加えて異化させる、というのはもっとやってほしいところだと思った。この作品の伝奇性ってそういう部分で十二分にフォロー出来ると思うので。
  • アクションですが…、これが多分、僕の中の期待値ともっともズレがあった部分だと思います。いや、十分にカッコいいんですよ、カッコいいんですけど…。せっかく奈須作品のアクションをやるなら、あともう一工夫、いや二工夫くらい欲しい、っつーのがアニメのアクション大好きっ子、世紀末中二病ユーザーたるこの俺様の望むところなのでございます。単純な「すごいアクション(作画)」なら他にいっぱいあるからね。まー、その辺りは今後6作品(特に第五章)で十分に期待できる部分だと思っていますが。直死の魔眼というギミックをもっとこう……ね! 分かるでしょ、男の子なら!(誰に言ってる、おまえは)
  • あと、導入の章にしてはちょっとコクトーと式がイチャイチャしすぎじゃないかと思ったんですが…これは単に僕が嫉妬(両者に)しているからなんですかね。でもあんな萌え姿勢で「今夜は泊まれ」とか言われたら……小生なら出ちゃってますね(何が?)(すべてが。あと式、お前の二つ名は今日から『萌山萌子』だ)(殺すぞ)


いやいや、こうやって改めて感想書いてみると、恐ろしいほどに無いモノねだりをしている自分を再確認して、バカじゃないかと思った。バカだな、俺は。バーカ、バーカ。原作ありきの作品で、サプライズを求めてどうする。バーカ。でも……



第二章も期待してます!!!(過剰に)