空の境界〈上〉〈下〉

すごい力作。アイデアやイメージや設定はどっかで見たことあるようなものだけど、それらを分解・再構築して物語にする上での練りこみが半端じゃない。京極作品やブギーポップあたりからの影響も感じるが、そういった影響も作者なりに咀嚼していると思う。そしてテキストも、一文一文丹念に書かれていて、手をぬいている部分がほとんど見えない。伝奇モノだろうと、SFだろうと、ミステリだろうと、ファンタジーだろうと、文学だろうと、ラノベだろうと、これぐらい練りこんで創られた力作っつーのはそれだけで価値がありますよ。

具体的な内容に関していうと、『伽藍の洞「」』と『忘却録音』のエピソードが好み。魔術師の設定とか、橙子と荒耶の問答なんかもおもしろい。キャラクターは、全員アクが強くて感情移入できるような連中じゃないけど、だからこそよかった。解説で書かれている伝奇小説の歴史薀蓄も、なかなか興味深い内容だった。

いやー、とにかくおもしろかったです。満足満足。


空の境界 上  (講談社ノベルス)

空の境界 上 (講談社ノベルス)


空の境界 下 (講談社ノベルス)

空の境界 下 (講談社ノベルス)