座頭市

勝新太郎、最後にして最強の、座頭市


傑作。ただこの作品単体の評価ではなく、それまでのシリーズを踏まえた上での評価って感じですが。
冒頭の牢屋のシーンからラストの決闘まで、胸が痛くなるほどの哀愁と力強さを感じさせる市がとにかく素晴らしい。シリーズから20年近く経って、白髪になり、声もちょっとつぶれてるんだけど、それが良い味になってる。何というか…数え切れないほどの悪党を斬り、数え切れないほどの人情に助けられ、数多の屍を越え、数多の命を救い、汗と埃にまみれ、風雨にさらされ、血で汚れ、刃も折れ、体も老いて……それでもなお生き続け、旅を続けてきたっていう、圧倒的な強靭さと存在感が滲み出ていて、凄い。
殺陣も凄いとしか言いようがない。全盛期に比べると体捌きの点で若干劣るが、剣捌きはほとんど神業。

ちょっと文句を言うと、前半はあれだけ異様かつ濃い面子と雰囲気で、それまでのシリーズの、良くも悪くもステレオタイプ的な悪党退治とは、一味違う話を展開出来そうだったのに、後半になっていつもの調子に物語が収斂してしまったのは勿体無かったかもしれない。
でも座頭市という男の「その後」を描いた作品としては、これ以上は望めないと思う。最後、決闘後に訪れる一瞬の余韻…。シリーズを観てきてよかったな、と思った。